GCOE外国人研究者等セミナー

池添貢二(脳神経工学講座 認知脳科学研究室(藤田研究室))

演題 Imaging the activity patterns of identified single neurons
演者 Dr. Takashi Sato
(Howard Hughes Medical Institute, Janelia Farm Research Campus, USA)
日時

2009年 8月28日(金) 16:00-18:00

場所 豊中キャンパス 基礎工学部J棟3階Room308






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報告

佐藤博士は、米国の大学院在学中に素晴らしい成果を挙げられ学位を取得し、現在は、光を使った神経機能の解析で輝かしい成果を上げているKarel Svoboda博士の研究室で研究を行っている。今回のセミナーではSvoboda研究室で行われた最新の研究結果についてお話し頂いた。

ラットの一次体性感覚野のヒゲ領域は(SI)は、ラットの顔面に並んだヒゲからの感覚入力を処理した後、高次感覚野である二次体性感覚野(SII)やヒゲの運動に関与する一次運動野(MI)等に情報を伝達する。この際、SIIとMIに均一な情報が伝達されているのか、それとも、それぞれの領野に異なった情報が伝達されているのかを明らかにすることは、脳が行う情報処理様式を明らかにする上で重要な課題である。

領野間で伝達される情報を明らかにするためには、個々の神経細胞の表現する情報とそれらの神経細胞がどの領野に軸策投射を行っているのかを同時に明らかにする必要がある。しかしながら、従来、微小電極を用いた生理学的な解析はin vivoで行い、解剖学的な解析はpostmortemで行っていたため、個々の神経細胞で刺激応答特性と軸策投射様式の両方を明らかにすることは非常に難しく、これまでほとんど行われてこなかった。

佐藤博士は、2光子顕微鏡を使ったin vivo イメージング法とウィルスを用いた逆行性ラべリング法を新たに融合させて用い、SI細胞の刺激応答特性と軸策投射様式を同時に解析することを可能にし、SIからSII、MIにどのような情報が分配されているかを明らかにした。SI細胞の内、MIもしくはSIIに投射する細胞をウィルスを使って可視化した後、SI細胞のヒゲに対する刺激応答特性をin vivoカルシウムイメージング法を使って解析した。

結果、MIに投射するSI細胞は他のSI細胞と比較して、広いヒゲ受容野を持っていた。SII投射細胞は他のSI細胞と受容野サイズについて違いがなかった。このことは、SIからSII、MIに異なった情報が分配されていることを示している。

MIに投射する細胞が広い受容野をもっていたことは、SIからMIには、SIからSIIに比べて、ヒゲの振動の検出に関する情報がより密に伝達されていることを示唆している。逆に考えると、SIからSIIには、どのヒゲが振動したかという情報がより密に伝達されていることを示唆している。これらのことは、MI、SIIにとって機能的に有用な情報がSIから選択的に伝達されていると考えることができる。

佐藤博士の研究は、神経科学における重要な問題を明らかにしただけでなく、技術的にも画期的であり、これからの発展がとても期待される。そのためセミナーではとても活発な質疑応答、議論がなされ、セミナー参加者にとって非常に有意義な時間であった。このようなセミナーをして頂いた佐藤博士とこのようなセミナーをサポートして頂いたGCOEプログラムに感謝したい。



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