GCOE外国人研究者等セミナー

森本雄祐(ナノ生体科学講座 プロトニックナノマシン研究室(難波研究室))

演題 Magnetotaxis and flagellar apparatus of marine bacteria MO-1
演者 Dr. Long-Fei Wu
(Centre National de la Recherche Scientifique)
日時

2009年 7月20日(木) 11:00-12:00

場所 吹田キャンパス ナノバイオロジー棟 3階セミナー室






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報告

磁性細菌は地球の磁場線に沿って泳ぐ性質をもつ細菌である。磁性細菌の存在自体は30年以上前に発見されていたが、これまであまり研究されてこなかった。しかしながら近年の研究により、新しい菌株の単離や研究手法が発展し、磁性細菌の性質について新しい情報が得られるようになってきた。
磁性細菌は特徴的な細胞内オルガネラ、マグネトソームを合成する。この生体膜によっておおわれた磁気ナノ粒子、マグネトソームをもっていることで磁性細菌は磁気走性を示す。マグネトソームは主に磁鉄鉱または磁硫鉄鋼の単結晶で35〜120 nm程度の大きさであり、菌体の中で鎖状を形成している。
磁性細菌はその広範囲な分布にも関わらず、世界中でわずかに数種類しか純培養の菌株が得られていない。今回のセミナーでは、最近Wu博士のグループによって、地中海から純粋培養を単離することに成功した海洋性細菌MO-1のべん毛の特徴について説明がされた。この磁性細菌MO-1はプロテオバクテリアの新規の属として分類されるかもしれない特徴をもつ。MO-1のべん毛は、既知の細菌べん毛とは異なった構造をとっており、電子顕微鏡像を見ると、7本のべん毛で形成されたバンドルが2つあり、これを鞘で覆ったようなかたちをしている。各菌体は約16のマグネトソームでつくられた鎖を1つもつ。このマグネトソーム鎖は細胞分裂の際に中央で分割されて2つの娘細胞の中へと分けられる。菌体の磁気極性はマグネトソーム鎖の配置により決定しており、MO-1菌株では、磁場線と平行して北極に向かって泳ぐnorth-seaking(NS)が多く見られる。South-seaking(SS)株はNS株から派生してくる。また、Wu博士らが開発した磁気分光測定法により、MO-1の極磁気走性がプロトン駆動力とナトリウム勾配の両方によって駆動していることが示された。これは今まで知られている磁性細菌には見られない特徴である。さらに、MO-1は少なくとも3種類のフラジェリン蛋白質をつくり、そのうち2つは糖蛋白質であることが示された。しかしながらフラジェリンのグリコシル化と分泌のメカニズムについてはほとんど理解されていない。
海洋性細菌MO-1は非常に興味深い性質である磁気走性をもち、250~300 µm/sという大腸菌の約10倍もの速度で遊泳する。この特有の運動を可能にするべん毛構造の特徴は、既知の細菌のそれとは大きく異なることがしめされており、構造解析によりその相違を明らかにすることでナノテクノロジーや感染症予防などに役立つことが期待される。



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