GCOE外国人研究者等セミナー

坂根 遼(生体ダイナミクス講座 生理学研究室 (倉橋研究室))

演題 The role of Matrix Metalloproteinases (MMPs) in neural injury and repair.
演者 Prof. Richard M. Costanzo
(Virginia Commonwealth University School of Medicine. USA)
日時

2009年 7月31日(金) 16:00 - 18:00

場所 豊中キャンパス 基礎工学部 B棟 302






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報告

7月31日に行われたGCOEセミナーでは、Virginia Commonwealth大学よりCostanzo教授をお招きし、神経の修復に関する特別講演を行っていただきました。Costanzo先生は優れた教育者として大学より表彰されたこともある方で、所々ジョークも交えながら聴衆の理解度に合わせて講演を行って下さいました。
講演では、嗅神経の損傷後、嗅神経が修復もしくは回復していく過程でMMPが重要な役割を担っており、このMMPを制御することにより、例えば怪我で嗅覚機能を失った人の治療に役立てられる、ということを提唱されました。
神経細胞は基本的に再生しませんが、嗅神経は例外的に再生します。また、匂い分子は嗅細胞に発現している嗅覚受容体によって受容されますが、この受容体はマウスで1000種類、ヒトでは350種類程の多様性をもち、各嗅細胞は1種類の嗅覚受容体のみを発現しています。同じ種類の受容体を発現している嗅細胞は嗅球上の特定の糸球に軸索を延ばしており、匂い地図を形成していますが、この接続を切断すると再び伸長した軸索の到達点が変わり、匂い地図が改編されるということがわかっていました。この過程で神経膠瘢痕が軸索伸長を阻害すること、そしてMMPが関与していることをCostanzo教授は確かめられ、Western Blot法を用いたところ、損傷後2日程でMMP-9の発現量がピークに達し、それに遅れて損傷後7日程でMMP-2の発現量がピークに達することがわかり、これをOlfactory Marker Protein (OMP)とGlial Acidic Fibrillary Protein (GFAP)の量と対応させると、MMP-9が炎症形成に、MMP-2が軸索伸長に関わっていることが示唆されました。
このことをさらに傷の程度を変えた二種類(Mild InjuryとSevere Injury)のマウスを用いて確かめられ、さらにDexamethasoneがGFAPの量を有意に減少させ、再生する軸索を増加させるということを説明していただきました。今後、DexamethasoneとMMPに着目することで、嗅覚機能を回復させる治療への応用が期待されます。
丁寧に分かりやすく話をしてくださったため、聴衆の理解も深まり、興味深く聞くことができました。また、研究内容だけでなく、講演後には教育に対する考え方やアメリカと日本の学生の違い等を伺うことができ、大変有意義なセミナーとなりました。



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