GCOE外国人研究者等セミナー

岸野佑圭子(生体ダイナミクス講座 生理学研究室 (倉橋研究室))

演題 Ca2+-ATPase as a regulator of Ca2+ homeostasis in vertebrate olfactory sensory neurons
演者 Dr. Salome Antolin
(Department of Physiology, Development and Neuroscience,Cambridge,UK )
日時

2009年 7月24日(金) 10:00 - 12:00

場所 豊中キャンパス Σホール  ディスプレイルーム






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報告

嗅細胞において、匂い物質を受容するシリアにはcAMPによって開口するCNGチャネルやCa2+依存性Cl-チャネルなどが存在している。そのためCa2+は活動電位の発生にも大きな影響を及ぼすため、シリア内ではCa2+濃度調節がどのように行われているかという点は嗅覚受容における重要なメカニズムの一つである。Ca2+はCNGチャネルを通ってシリア内に流入すると考えられているが、その排出機構については未解明の部分が多く残されていた。
今回ケンブリッジ大学からお越しいただいたAntolin博士はfire salamanderやfrogの嗅細胞にsuction pipette recordingを利用することにより嗅細胞のシリアにおけるCa2+の排出機構について研究されている。Ca2+の排出機構はcAMP分解酵素であるホスホジエステラーゼ阻害剤IBMXを用いることにより知られた。それによりCa2+の排出は2通りの方法を利用されていることを発見された。一つはNa+--Ca2+交換機構である。IBMXにより細胞内部のCa2+濃度を高めた状態で細胞外部のNa+濃度を変化させ、脱分極により発生した電流の減衰を観察することによりCa2+排出は細胞外のNa+濃度に依存することが分かった。
 もう一つの機構はCa2+-ATPaseを利用した機構である。Ca2+-ATPaseはNa+--Ca2+交換機構が限界に達した時に、電流応答を回復させるために利用されることがカエルとマウスでわかった。
 聴覚における有毛細胞ではCa2+排出にCa2+-ATPaseを利用し、視細胞ではNa+--(Ca2+-K+)交換機構を利用していることが知られていた。そのため嗅細胞では種によっては1つでなく2つの機構を用いてCa2+の排出を行っているという今回の発見は、シリアにおける未知なるメカニズムの一つを解明するものであり、さらなる発見につながるものであると期待される。
 パワフルな女性研究者として研究内容を発表してくださっただけでなく、セミナー後も学生らと積極的に交流してくださったアントリン博士に感謝し、この報告を終わらせていただく。



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