GCOE外国人研究者等セミナー

岡田研一 (脳神経工学講座 視覚神経科学研究室(大澤研究室))

演題 Social Learning, Imitation and Herd Behavior
演者 Mr. Christopher J. Burke
(Department of Physiology, Development & Neuroscience University of Cambridge)
日時

2009年 7月6日(月) 17:00-19:00

場所 豊中キャンパス 基礎工学部J棟3階セミナー室






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報告

ヒトやサル、あるいはペンギンやミツバチにいたるまで、多くの生物は他者の行動から学ぶ事が出来る。これは現象としては馴染み深いものだが、学習のメカニズムはほとんどわかっていない。Burke氏の所属する研究室では、このようなSocial Learningの問題に対して、経済学と動物の学習理論の知見を組み合わせたアプローチで実験を行っている。

今回のセミナーでは行動実験とfMRIによる脳活動計測によって、
(1) ヒトが他者の行動にどれくらい影響を受けるか、
(2) ヒトが他者の行動からどのように学習するか、を調べた結果についてお話いただいた。

ヒトが他者の行動にどれくらい影響を受けるかを調べるために、投資ゲームを行った。被験者に群衆の投資行動の情報を与えると、多くの被験者で群集と同じように行動する傾向が見られた。群集の行動に影響を受けやすい被験者では、ventral striatumで、群集の投資行動(100%, 50%, 0%)と相関する活動の変化が見られた。また、行動を決めるまでの反応時間は、群集に従うときには短くなり、群集に逆らうときには長くなった。脳活動では、群集に従うときにはamygdala、群集に逆らうときにはanterior cinglate gyrusで活動の増加が見られた。これらの結果は、ヒトが他者の行動に影響を受けること、さらにそれが高次の情報処理を行っているとされる皮質よりもむしろ辺縁系で処理されていることを示唆している。
次に、ヒトが他者の行動からどのように学習するかを調べるために学習課題を行った。この課題では、2つの選択肢から、より多くの報酬(お金)を貰える行動を試行錯誤的に学習する。被験者は二人でペアになり、自分と相手の行動とその結果を見ることで学習をしていく。行動実験では、被験者は相手の行動の結果を使って、より速く学習することが出来るという結果が得られた。脳活動では、他者の選択の結果(+10/±0)を見ているときに、被験者の報酬系であたかも自分がそれを経験しているかのような活動が得られた。
Burke氏はさらに、他者の情報を用いて学習する際の学習モデルを提案した。一般的な行動学習のモデルでは、ヒトは行動の選択肢毎に価値を計算し、もっとも価値の高い行動を選択する。さらに実際の行動の結果から、その行動の価値を更新することで最適な行動則を学習していく。今回のモデルでは、自分の行動のみならず他者の行動からも行動価値を更新することができるとし、ただしそれぞれの場合で更新速度が異なるものとした。行動実験のデータをこの学習モデルでfittingしてみると、この単純なモデルによって被験者の行動を良く説明できることが示された。

この研究はまさに異分野融合的なものであり、セミナーでは普段馴染みの無い経済学の概念についてなど、多くの質問が行われた。



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