GCOE外国人研究者等セミナー

喜多善亮 (脳神経工学講座 脳システム構築学研究室(村上研究室))

演題 Molecular mechanisms controlling spinal motor neuron myotopy
演者 Dr. Artur Kania
(Neural Circuit Development Laboratory, Institut de recherches cliniques de Montréal (IRCM) Department of Anatomy and Cell Biology, Division of Experimental Medicine, McGill University and Faculté de Médicine, Université de Montréal, Montréal, QC, Canada)
日時

2009年 6月5日(金) 13:00-15:00

場所 吹田キャンパス アネックス棟 2階セミナー室






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報告

 神経系において,ある特定の位置に存在するニューロンの細胞体から出た軸索は特定の領域へ投射する。このような神経結合の特異的な対応関係は,トポグラフィックな神経地図と呼ばれる。このような「地図」が作られる仕組みを知るために,Kania博士らは,脊髄のlateral motor column (LMC) のニューロンに着目している。これらの運動ニューロンは,LMC内のどの位置に細胞体があるかによって,決まった領域の筋肉に投射する。つまり,LMCのlateral側に位置するニューロンは肢の背側の筋肉を,medial側のニューロンは肢の腹側の筋肉をそれぞれ支配する。

 まず博士らは,EphBチロシンキナーゼ受容体がmedial LMCニューロンの軸索に発現し,ephrin-Bリガンドが肢の背側に発現することを確認した。機能解析の結果から,ephrinB:EphB反発シグナルにより軸索が腹側へと方向づけられることを示した。この結果は,lateral LMCニューロンの軸索がephrinA:EphAシグナルによって肢の背側へ方向づけられるという博士らの過去の知見と相補的なものである。

 次に,博士らは軸索ガイダンスにかかわる受容体のシグナルを仲介する分子としてSrcファミリーキナーゼに着目した,これがLMCニューロンの軸索ガイダンスに必須であり,かつephrin:Ephによる軸索ガイダンスしおけるシグナル伝達において重要な役割を果たすことを明らかにした。

 また,興味深いことにEphB遺伝子欠損マウスの解析ではLMCニューロンの軸索の投射は完全にランダムになるというわけではなかった。そのため,ephrin:Ephシグナルに加えて,他のシグナルの存在が示唆された。博士らは最近の研究からその一つがNetrin1と反発あるいは誘引作用を引き起こす受容体によるシグナルであることを突き止めた。

 今回の口演においてKania博士は,上記の内容に加えて進行中のプロジェクトから得られた最新の知見についてもお話し下さった。脊髄のトポグラフィックな神経地図について数多くの目覚ましい研究成果を発表され,神経発生を研究する者にとって非常に刺激的な口演であった。



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