GCOE外国人研究者等セミナー

藤井 高志 (ナノ生体科学講座 プロトニックナノマシン研究室(難波研究室))

演題 How do the spliceosomes find where introns start? Crystal structure of human U1 snRNP
演者 Dr. Kiyoshi Nagai
(MRC Laboratory of Molecular Biology)
日時

2009年 4月7日(火) 16:00-17:00

場所 吹田キャンパス ナノバイオロジー棟 3階セミナー室






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報告

真核生物ではイントロンと呼ばれるDNA配列がタンパク質に翻訳される遺伝子の間に挿入されているが、タンパク質に翻訳される際にイントロンは切り取られエキソンが繋ぎ合わされる。この重要な過程においてイントロンの切り出しおよびエキソン同士のつなぎ合わせを行なうのがsmall nuclear ribonucleoprotein paticles(snRNPs)とよばれるタンパク質で、RNAからなる超分子複合体群である。snRNPはU1,U2,U3,U4,U5,U6の6種類あり一連の過程においてそれぞれが役割を担っている。今回、Nagai博士にはこのうちU1 snRNPの5.5Å分解能での結晶構造についてお話していただいた。U1 snRNPはイントロンの5'末端側を認識し切り出す役割を担っている。U1 snRNPはU1snRNAと、7分子のSmタンパク質と、U1にだけ存在するU1-70K、U1-A、U1-Cタンパク質からなる超分子複合体である。
 5.5Å分解能では、アルファヘリックスは棒状に、ベータシートは板状の密度として表示される。その電子密度マップ上に直接原子モデルを構築することは、低分解能であるためできない。U4のSmリング構造についてはすでに原子モデルが得られていたので、このリング構造を密度マップに当てはめた。U1-70KはN-末端100残基程度がU1-Cの結合を助けると考えられていたが、結晶構造の密度マップではU1-70KとU1-CがU1コアドメインを間にはさんで反対の位置に存在しており、相互作用することは不可能に見えた。そこで、U1-70KのN-末端領域で7つものアミノ酸をそれぞれメチオニンに置換し、7つのSeMet置換体の結晶からX線回折データを得て、それぞれのメチオニンの位置を同定した。その結果、U1-70KのN-末端鎖がSmリングを取り巻く様に伸びた構造を取り、18nmも離れたU1-Cへとつながっていた。タンパク質は必要に応じてどのような構造でも取りうるという、非常に示唆にとんだ構造であり、また驚くべき構造である。U1-Cは典型的なZnフィンガーの構造をしていて、5'側のスプライシングサイトの認識に重要であることがわかった。膨大なX線結晶構造解析のデータを慎重に積み上げることで、低分解能の構造でも厳密に構造を決定することができるというメッセージを含め、生物学的に重要なRNAとタンパク質間のネットワークを構造学的視点からクリアにお話ししていただいた。


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