GCOE外国人研究者等セミナー

岡崎安孝(脳神経工学講座 認知脳科学研究室 (藤田研究室))

演題 How the brain handles vertical disparity
演者 Dr. Jenny Read
(Institute of Neuroscience, Newcastle University, UK)
日時

2009年 8月1日(土) 16:00 - 18:00

場所 豊中キャンパス 基礎工学部J棟3階セミナー室






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報告

物を立体的に見ることが出来るのは、脳が様々な手がかりから、立体視を可能にしているからだ。その手がかりの中でも両眼視差は非常に重要な手がかりとして考えられている。今回お話頂いたJenny Read博士は両眼視差を心理物理学的、もしくは生理学的なアプローチを用いて研究をされている。
我々は、網膜像は2次元にも関わらず外界を3次元として知覚している。我々の眼は水平方向にわずかに離れて存在する。そのため、右目と左目の網膜像はわずかに異なる。そのような両眼間の網膜像の差を両眼視差と言う。両眼視差には2種類ある。一つは、水平視差(horizontal disparity)がある。これは、水平方向の両眼像の差のことを意味する。一方、垂直視差 (vertical disparity) と呼ばれる視差がある。これは、垂直方向における両眼像の差のことを指す。
Jenny Read博士は、その2つの視差の内、vertical disparityに焦点を当てた研究の話をされた。30cm離れた刺激画面上に、垂直方向に位置の異なる刺激を左右眼それぞれに呈示する。こうすることで、画面上にvertical disparityを実験的に作りだす。しかし、この刺激は、実際には存在し得ない刺激になってしまう。本来、網膜上で生じるvertical disparityは、眼球がどのような向きに向いているかによって定義できる。しかし、刺激画面上にvertical disparityを作り出すことで、本来あり得ない刺激になる。Read博士は、このような刺激を "unnatural" な刺激と定義した。この "unnatural" な刺激は、無限円を見ている時に網膜上で生じる視差と同一である。一方で、horizontal disparityのついた刺激をnaturalな刺激と定義した。
このような "unnatural" な刺激と "natural" な刺激を用いて、心理実験を行った。心理実験は、視差のついた刺激が四分円のどこに現れたかを答えるものだ。実験は、刺激にnoiseを加えることでtaskの難しさを調節した。驚くべきことに、"unnatural" な刺激を用いた時のほうが、弁別成績が良かった。
Read博士は、この結果から、"unnatural" な刺激は対応点問題を解く上で重要な性質を示していると考えた。対応点問題とは、左右眼の網膜像には、正しい対応が一つある。左右の網膜像は無数の対応する点があり、その中から正しい対応点を見つけるのは非常に困難な計算である。対応点問題は両眼立体視研究の主要な問題のひとつである。
Read博士は、脳は対応点問題を解く際に、対応点の存在する可能性の範囲のうち、vertical disparityが0度の時に、最も正しく対応点を見つけることが出来ると考えた。このことを、今まで知られてきた生理学的な根拠とモデルによる予測から導き出した。
今回の研究は、両眼視差の研究をしていても、理解が困難に思えるような内容であった。しかし、Read博士の説明は、非常に明快であったために、聴講者は理解が出来た。また、普段は両眼視差を研究している者でも、なかなか考える機会のないvertical disparityの話は非常に興味深く、質問も盛んに行われた。



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