本研究科教官による”今からでも遅くない物理入門”  2003年10月より雑誌「細胞工学」に連載中
監修:大阪大学・大学院生命機能研究科 木下修一 執筆:大阪大学・大学院生命機能研究科教官

     
  ”今からでも遅くない物理入門”と題する本連載は、生命機能研究科で大学院1年生向けに基礎数学・基礎物理学の授業を担当している教官が、基礎的な知識をともすれば理解できずに物理のいろいろな現象に接している生物系の学生および若手研究者のために、生命現象や身近な事柄を題材にその底を流れる物理を易しく解説していこうとする新しい試みである。 内容は、高校生や大学で物理学を学んでいなくても理解できるように、できるだけ易しく書くように心掛けている。また、可能な限り参考書として高校生向けの参考書を挙げ、基礎から勉強したい人へ便宜を図っている。各回とも初めに、文章を読み進めるときに式をどの程度理解すればよいかのガイドラインを載せるなど、まったく物理に接していない人にも、すでに物理を使っている人にも、共に興味が持てるよう配慮されている。

自然科学は数学・物理・化学・生物・地学というように専門科が急速に進み、我々が専門研究を始めるときに、本来すべての学問の基礎知識が必要な自然科学のごく一部しか接していないという異常な事態になり始めている。生命現象のような複雑な仕組みを持つシステムの研究はされに細分化が進み、生命現象の本質的な理解ばかりでなく、生命の持つ様々なメカニズムを利用する工学的な研究も急速に進んできている。このような背景のもとで生命現象の研究を進めていくためには、生物学の知識だけで全体を理解しようとしてももはやまったく不可能な状態で、自然科学・工学など多くの分野の知識や理解が不可欠になってきている。

大阪大学大学院生命機能研究科は、生命現象を生物学のみならず、物理学・工学・医学など異なった分野の研究者が多面的に研究していこうとする新しい研究科である。数学・物理学・化学・情報科学などの理工学的基礎を備えた生命科学研究者の育成のために、大学院入学初期に、数学・物理学・化学・生物学・医科学の基礎を補充できるようになっている。
 
     
 
 第1回   タマムシはなぜ光る?:光の干渉と回折 
●木下修一

光り輝くタマムシを題材に、光の性質/多層膜干渉/薄膜干渉/回折現象などを平易に解説

 第2回  荷物を持っているだけなら仕事はしていない?:力学的エネルギーと仕事 ●木下修一
力学の世界で力×距離で表される仕事とエネルギーの関係を易しく解説
 第3回  吸収と発光(1)  ●渡辺純二
物質による光の吸収と発光を、ミクロな立場から易しく解説
 第4回  吸収と発光(2)  ●渡辺純二
光吸収や発光の実験から得られる情報について易しく解説
 第5回  電位の話 ●吉岡伸也
電位、電位差、電圧など、同じような意味を持つ電磁気学の言葉を整理しながら”電位”の物理的な意味を考える
 第6回  すべては熱になる:熱とエントロピー  ●菊池 誠
熱が関わる現象を理解するには欠くことのできないエントロピーの概念を中心に、熱力学の考え方を易しく解説
 第7回  でたらめ:確率現象の話  ●菊池 誠
コイン投げの裏表のように、どちらになるかが決まっている訳でないがその頻度は決まっているという確率現象について考える
 第8回  限界を超える顕微鏡(1)解析と結像  ●中村 收
近年急速に進化した光学顕微鏡のしくみについて、光の回折と結像をもとに易しく説明 
 第9回  限界を超える顕微鏡(2)ナノ光学 ●井上康志
光の波長よりもはるかに微小な領域を観察できる光学顕微鏡の原理と実際について易しく説明
 第10回  楽器の話:古くて新しい、もう一つの”メゾ・ナノ”物理  ●阿久津泰弘
光の波長よりもはるかに微小な領域を観察できる光学顕微鏡の原理と実際について易しく説明
 第11回  生物分子モーターの働く仕組み  ●江崎誠治、柳田敏雄
生物はゆらぎを味方につけて、柔軟に機能しているらしい。近年の成果をもとに分子モーターのメカニズムに迫る。
 第12回 蝶の羽ばたきは嵐を呼ぶか?:カオスが語る生命現象 ●時田恵一郎
生物群集の個体数変動を表す最も簡単な非線形写像系からはじめて、カオスと生命現象のつながりを平易に解説
   
 
 
子供のときにタマムシを追いかけ回した経験のある人はご存知だろう。山道を歩いていて、突然ぴかっと光るこの虫に出くわすと、思わずどきっとしています。いったいなぜあんなに光っているのだろう。タマムシのほかにもハムシやコガネムシなど甲虫の仲間には光るものが多い。同じ光る昆虫でも中南米に棲むモンフォチョウの輝きはまた特別で、ビロードのような深みのある輝きである。これに対し、甲虫の輝きはどこか金属的な感じがする。こうした違いは何によっているのだろう。タマムシの翅の輝くような色は翅の内部にあるクチクラの繰返し構造によっていることが電子顕微鏡観察からわかってきた。このような繰返し構造を持っているとどうして色が付くのだろうか。タマムシの多層膜構造を題材にして、光の発生の仕組み、干渉と回折、薄膜干渉と多層膜干渉のしくみなどを物理学から眺めてみた光の世界を易しく解析
 
(連載第一回:「タマムシはなぜ光る? 光の干渉と回折」より抜粋)
 
 
 


 

 
 
 
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