COE海外派遣 レポート

 

守屋 奈緒(ナノ生体科学講座 プロトニックナノマシングループ M2)
派遣期間:平成16年8月2日-9月15日(45日間)
派遣目的:エール大学(U.S.A.)にてべん毛フックの部位特異的突然変異体の作成とその機能解析を行う




1.  タイトル: 共同研究相手先研究室に6週間滞在
2. 申請者氏名: 守屋奈緒
3. 所属研究室: ナノ生体科学講座 プロトニックナノマシングループ
4. 派遣先: Department of Molecular Biophysics & Biochemistry, Yale University
5. 用務の概要
●出張の目的
 共同研究相手先であり、遺伝子操作技術を得意とするエール大学のMacnab研究室に6週間滞在し、部位特異的突然変異体作製法の技術について学ぶこと。

●出張の内容
  べん毛フックは、ダイナミックな形態スイッチ機構を持つ長さ55nmのらせん型の構造体で、べん毛モーターの高速回転をスクリューとして働く繊維に伝達する自在継ぎ手として働いている。私はフック蛋白質の構造と機能の相関、およびフック長さ制御機構を解明することを目的とした研究を行っている。
今回の出張でエール大学に行くまでに行った実験で、DNA-shuffling法によりSalmonellaのべん毛フックの遺伝子(flgE)にランダムな変異を誘発し、機能解析によって運動機能に何らかの欠陥を持つ突然変異体を約20個単離することができた。そしてDNAシーケンス解析の結果、各々に複数箇所の変異が確認できた。個々の変異によって引き起こされる運動機能低下を詳細に調べて、それぞれの変異部位の役割を解明するため、個々の変異を持つ、またそれらの組み合わせを持つ突然変異体を単離し、機能解析を行う必要があり、そのために、遺伝子操作技術を得意とする共同研究相手先であるエール大学のMacnab研究室で部位特異的突然変異体の作製技術を修得する機会を得た。
  滞在期間中には、部位特異的突然変異体の作製技術の修得の他、我々の研究グループで必要なプラスミドの作製や、すでに単離したflgE突然変異体のpseudorevertant(疑似修復変異体)のシーケンス解析も行った。

 1. 部位特異的突然変異体作製
  オリジナルのプラスミドを目的の変異箇所を持つ相補的な2つのプライマーを使ってPCRを行い、目的の変異を持つプラスミドを増幅させる。その後、DpnTという制限酵素で、テンプレートとして使った変異のないプラスミドを切断することによって除去する。このような実験方法はSite-Directed Mutagenesisと呼ばれ、この実験技術により目的の変異を持つプラスミドを作製することができる。
日本から10組のプライマーを持参し、10種類の突然変異体を単離する準備をしていたが、Site-Ditected Mutagenesisにより、滞在期間中に9種類の目的の変異を持つflgE突然変異体を単離することに成功した。

 2. プラスミド作製
 我々の研究グループで必要な4種類のプラスミドの作製を試みた。4種類中3種類に関してはThermotogaの染色体DNAをテンプレートとし、目的の遺伝子をPCRにより増幅させた。その後PCR産物を電気泳動の後ゲルから切り出し、Gel Extraction Kitにより精製した。精製したPCR産物とプラスミドを制限酵素で切断し、クローニングを行った。最後の1種類に関してはMacnab研究室が所有しているプラスミドから目的の遺伝子を制限酵素で切断することによってクローニングを行った。
  結果、2種類のプラスミドを作製することに成功したが、残りの2種類に関しては滞在期間中に作製し終えることができなかった。これらに関しては、Macnab研究室にプラスミド作製を依頼した。

3. PseudorevertantのDNAシーケンス解析
  flgE突然変異体のpseudorevertantを約40個単離したうち、19個の菌株についてSalmonellaのflgEに関してシーケンスを行った。結果、11個の菌株については2nd site mutationが同一遺伝子(flgE)内に存在したが、残りの9株については2nd site mutationが同一遺伝子内に見つからなかった。 

●出張の成果
今回の派遣では、共同研究相手先に滞在することによって、部位特異的突然変異体作製法の技術を修得することができただけでなく、Macnab研究室のみなさんから現在自分が行っている研究について貴重な助言を頂くことができた。
 初めて海外の研究室で実験を行う機会を得て、幅広い視野を身につけることができました。実際に外国人研究者が研究している姿を垣間見て、活発に議論を行うなどといった、研究に対する積極的な姿勢などは、自分にとって学ぶところが多かった。

●今後の展望
 今回の派遣期間中に作製した突然変異体の機能解析を行うと同時に、修得した実験技術によりそれらの変異箇所の組み合わせを持つ突然変異体を単離し、機能解析を行う予定である。
 同一遺伝子内に2nd site mutationが存在しなかったpseudorevertantに関しては、フックキャップ蛋白質の遺伝子(flgD)に関してシーケンスを行う予定である。
 今後、上記の実験を含め、研究を進めることにより、
@遺伝学的解析結果をフックの原子モデルにフィードバックすることにより、フックの原子モデル(本研究室のSamatey ら提案)の正当性を評価
A結晶化不可能領域を含むフック蛋白質全体についての分子モデルの構築
Bフックの長さが55nmに制御されているメカニズムの解明
を目指す。